心底笑男の不思議な対談[第一回] 心底笑男×和田佳憲

2013-05-02  心底 笑男

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みなさん、こんにちは!心底笑男です。

前作「Across The Universe」のリリースに合わせて生まれ、大好評をいただいた鼎談インタビュー企画。今回は一対一の対談形式で、各メンバーの華麗な音楽遍歴を掘り下げて行きます。

Senkawosの「ジャンルごった煮感」を形成する素材。それは各メンバーの聴いて来た音楽や環境・音の質感の好みであり、彼等の出す音は謂わばその「煮こごり」の様なものなのです。

全5回の連載で一人ずつをフィーチャーして濃密な対談を繰り広げ、音源やライヴでは伝わりきらない部分から、もちろん新作「Seed」についてまで。たっぷり聞いちゃいましたYO!!!

さて、第一回となる今回はSenkawosのドラム担当、ワディこと和田さんをお迎えしました。打楽器全般に造詣が深く、Senkawos以外にも様々なバンドを渡り歩き、ドラム・パーカッションの可能性を追求しています。こと音楽に関してもオールジャンル、分け隔てなく聴く姿勢がドラムのプレイスタイルにも多大に影響しているのではないでしょうか。始めてみましょう。

第一回 心底笑男×和田佳憲

心底:和田くん、久しぶりだね。

和田:お久しぶりです!ちょっと痩せました?

心底:今回は音楽的なRootsを掘り下げて行きたいので、よろしくお願いします!ではベタベタな質問から。音楽との出会いはいつ頃?

和田:音楽を好きだと意識するようになったのは、小5の時に好きになったスピッツですかね。でも本当に幼少期、僕自身覚えてないんですが、3歳ぐらいの時はよくテーブルの上で少年隊の真似をひたすらしてたみたいなんで、出会いはその頃かもです(笑)。東ファンでした!

心底:ははっ(笑)。ヒガシ!でも和田くん少し似てるよね。言われない?そのパーマとか。最初に買ったレコード、CDは覚えてる?

和田:言われません(笑)。確かスピッツのアルバム「ハチミツ」か、H Jungle with Tの「Going Going Home」だったと思います。あと忘れちゃいましたがアニメ『魔方陣グルグル』のエンディングテーマだったかもなー、当時好きだったんですよねー。

心底:H Jungle with Tかー懐かしいね。魔法陣?グルグル?そこら辺は分からない(笑)、世代か違うからな。

和田:え?心底さんって、おいくつでしたっけ?

心底:もう、アラ還だよ。

和田:あらかん?

心底:アラウンド還暦!

和田:そうなんですね…。シングル盤は半分の所でパキって折っちゃたりしてましたねー、分かります笑?

心底:それは分かる!8cmシングルだ。あれって立て掛けて飾れるようにとか出来るんじゃなかったっけ?Senkawosもあのフォーマットでシングルだしてみれば?

和田:立て掛けて飾る用なんですか?!知らなかったー!8cmってまだあるんですかね?出してみたいですねー。

心底:じゃあ、小中高時代の好きなアーティストは?

和田:小学校はスピッツとあと、J-POP。中学校時代はイエモンがとにかく好きで、あとミッシェルとかブランキーも好きでした。

心底:あーそこら辺なんだねー。

和田:高校の時はBRAHMANとかPUNKとミクスチャー?を好んで聴いてて高校の後半はラテンとかワールドミュージックに興味が湧いてきた時期でしたね。

心底:ほぇー。面白い流れだね!

和田:BRAHMANみんな好きでしたよね、今でも本当に格好いいです。

心底:確かに人気あったよね。凄いデカいシーンになってたもんね。中学時代はなんでイエモンだったの?

和田:イエモンは先輩が文化祭ライヴとかでやってたのがあって、中、高はなんか、初期衝動みたいので激しいのが好きでしたね。でもPUNKに飽き始めた頃、Your Song is Goodのライヴを新宿かどっかのファッションショーのライヴで見て「これだ!」って思いましたね。それで元となるレゲエとかラテンのレコード探し出したりしました。

心底:へー!やっぱりルーツを掘り下げるのって楽しいよね。初めてライヴ見に行ったのは?誰?

和田:やっぱりイエモンかな?東京ドームの、活動休止前最後の。街のライヴハウスなら大島君が昔やってたバンド、神保町とかのライヴハウスだった記憶がありますね…僕がまだ中3とかで、大島くんが高1。

心底:それは初々しいね。どうだった?

和田:いやー、どうだったんだろ(笑)!大島君のライヴは楽曲にどうノッたらいいのか分からず、腕組んでのってたら友達に「変だよ」って言われたの覚えてますね(笑)。

心底:はははっ(笑)。僕もよくあるよ。クラブで踊りたいんだけど、手をどう動かせば変じゃないかが気になって、結局ポッケに突っ込んじゃうんだよね。

和田:分かる!僕も一番落ち着くのは右手に煙草、左手にグラスで観るのが一番落ち着きますよ(笑)。

心底:これはみんなに聞いてる質問ね。Senkawosはジャンル横断のごちゃ混ぜな感じたけど、一言でいうなら何だと思う?

和田:Senkawosは…(遠くを見つめながら)なんだろ、おもちゃ箱ひっくり返した!?とか昔誰かに言われたなー…うーん、『真面目にふざけるJAMBAND』?

心底:まあそうなるよね。じゃあ、好きなドラムプレイヤーは?

和田:日本人なら坂田学さん!今度から教えて頂ける事になったんですよ〜!(本当に嬉しそうに) 他にも数多くいますけど、
・外山明
・タナカ慶一
・山本達久
・芳垣安洋
・椎野恭一
・千住宗臣
・中村達也
・本田珠也
・あらきゆうこ
とか。海外なら、
・Billy Martin(Medeski, Martin and Wood)
・Stanton Moore
・Brian Blade
・Michael Travis(The String Cheese Incident)
・Jon Fishman(Phish)
・Mickey Hart(Grateful Dead)
・Tony Allen
から特に影響を受けましたね。あと昨年ジャワで会ったガムランの先生方とか。

和田は現在東京音楽大学にてジャワガムランを勉強中、昨年夏には実際にジャワの古都「ソロ」を訪れ現地のプレイヤーから手ほどきを受けた。

和田は現在東京音楽大学にてジャワガムランを勉強中、昨年夏には実際にジャワの古都「ソロ」を訪れ現地のプレイヤーから手ほどきを受けた。

心底:手練の怪物級プレイヤーばかりだねー。普段から沢山の音楽を聴いているみたいだけど、音楽に救われたエピソードとかあれば教えてよ。

和田:中学時代は結構勉強が嫌いで、家帰っては音楽聴いたり練習したりを三年間繰り返してましたね(笑)。そういった意味では救われたのかな。

心底:そうなんだ。思春期か…。

和田:でも今でもドラムとか太鼓叩いてる時(プレイしてる時)が一番精神状態が安定してるなって、よく思います。心の中の自分の部屋にいる感じというか、一人で叩いてる時は、ある種の瞑想みたいになるように心がけてます。

心底:いいなぁ。無心で夢中になれるって憧れるな。音楽を聴く時の好きなシチュエーションとかある?

和田:電車に乗って景色を眺めてる時とか、あとは一人で車に乗ってる時かな。あとは山とか森とか湖の畔とか、夜に火を焚いて聴く音楽は特別だなっていつも思いますね!

心底:このロマンチストが~!じゃあ逆に音楽に興味がなかったら、今頃なにが好きだったと思う?

和田:えー、なんだろ。陶芸とか?したかった時期がありました。

心底:ははっ(笑)。以外だね。でもやってみたら楽しいかもね。普段は、どこでCDとか買うの?

和田:もっぱら御茶ノ水のジャニスのレンタルか、小石川図書館ですね(笑)。月に20枚以上は借りて聴いてますね。

心底:それだけ借りると聴ききれないんじゃない?

和田:聴ききれないんですよー、でも次々借りたくなっちゃうんですよね。

心底:動物園とか海の家とか色々な所で演奏しているけど、これから演奏してみたい場所とかある?

和田:野外は当然ですけど、ガムランで演奏してみて思ったんですけど、バンド用のライヴハウスとかスタジオって音を吸音する仕組みの部屋が大多数じゃないですか。でもそうじゃなくて、音を増幅させない、要は電気を使わないで生の楽器の鳴りだけで本当に良い音がする場所、クラシックのコンサートホールとか。

心底:なるほどね。

和田:それこそ考えられて設計されてない自然の場所だと尚良いですね。自然にできた音の反響が本当に綺麗な場所とか、そういうところに最近は興味がありますね。土取さんみたいに、洞窟とか。そういう所で演奏してみたいです。

心底:うんうん、アンプラグドだね。

和田:同じような事だと思うですけど、ドラムも本当はマイキングをしたくないんですよ。生に伝わる音がその楽器本来の音じゃないですか?マイクを通すとやっぱりどうしても音が変わるし、楽器個々の音量も変わりますよね?

心底:そうだね。昔のそれこそ酒場で奏でられてたJazzのライヴの録音なんかも、生々しくて凄いよね。やっぱり音を空気に触れさせるのは大事だよね。ワインの様にさ。和田くんのあのヴィンテージ・ドラムは音が良いから、生でも聴いてみたいな。

和田:Slingerlandのドラムは本当に気に入ってます。一生モノのパートナーを見つけたなって。楽器本来の鳴りを味わえる、そんな場所で演るのが好きですね。

「Seed」のレコーディングでも使用された和田の愛機、'60s Slingerland。カヴァーリングが眩しい。

「Seed」のレコーディングでも使用された和田の愛機、’60s Slingerland。カヴァーリングが眩しい。

心底:演奏旅行で行ってみたい国とか街とかある?

和田:キューバ、ブラジル、ニューオリンズ、コロラドとかですね。

心底:いいね。例えばの話ね、明日地球が滅亡します。となったら何を聴く?

和田:Sibylle Baier(シビルべイヤー)の「Colour Green」かな?心底さん、知ってます?

心底:んー。知らないね。

和田:すっごいダウナーの(苦笑)女性のフォークソングアルバムなんですが。ジョニ・ミッチェルとかに例えられるのかな?完全なプライベートレコーディングでもう、本当にその部屋の温度が伝わってくるような名盤中の名盤ですよ。僕は聴いてるとどんどん悲しくなります(笑)。

心底:その気持ちは分かるね(笑)。暗い気分になりたくて、戦争映画の重ーいの観たり。たまにしちゃうよ。映画といえば、この映画のサントラやりたいとかある?

和田:サントラやりたい映画ってのはパッとは浮かびませんが、最近観た「Life of Pie」の音楽がやばかったです。虎と漂流する映画。インド音楽とか色々あって、映像も本当に美しくて良い映画だったなーサイケデリックでした。あと「おおかみ子供の雨と雪」の高木正勝さんの音楽も本当に美しいですよね!

心底:へー!観てみよう!じゃあもしもシリーズなんだけど、一万年後の地球で一枚のCDが発見されました。それは貴方のCDでした。なんのCD?

和田:将来出したいと思ってる「和田佳憲の原始的なドラムミュージック集」ですね!

心底:おー!聴きたいよ!今年も野外フェスシーズンが到来したけど、和田くんが好きなアーティストを集めてフェスを開催出来るとしたら、トップライナー五組は?

和田:えーと…。
・Phish
・MMW
・外山明・大儀見元Duo
・The Innocence Mission
・Fela Kuti
完全に今思い浮かんだだけですけどね。

心底:うわぁ。それは豪華だなー。Senkawosも野外でバンバンやってって欲しいね。じゃあ最後になるけど新作「Seed」の聴きどころはどこだと思う?

和田:「Seed」はSenkawosの植えた新しい種なんです。新しい種を植えてこれからどんな形に成長していくのか、ちょうど昨年暮れから周りを取り囲む環境も変わってきました。もう自分達だけのバンドじゃないんだなって思います。でも、新しい種って意味では、これから初めてSenkawosを聴いてくれる人が長く聴けるような、Senkawosと言ったらSeedと言うような作品になったと思います。前回までと違い、あまりふざけてないですし(笑)。

心底:確かに(笑)。やりたい放題だった前作から一変して、バンドとしての方向性みたいのが見えてきたなと思うよ。でも「ふざけ」はないけど、遊び心は相変わらず溢れてるよね。次回作には大いに期待が高まる仕上がりだね。今日は長々とありがとうね。

和田:こちらこそありがとうございました!「Seed」、2013年5月15日、全国一斉発売です!ぜひ皆さんレコードショップでお手にとってみてください~!

インタビュアー:心底笑男
音楽評論家。その「味」のある視点で音楽は元より食や映画などを独自の切り口で探求し続けている。2009年に発表された小説「冷めないラーメンはない」が異例の大ヒット。翌年映画化され、第13回新江古田国際映画祭、グランプリにあたる「金熊猫賞」を受賞。
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