第一回「感覚はランダムに」

2015-06-29  Reo Yoshida

Senkawosのキーボード吉田と、Senkawosファンにはすっかりお馴染みとなった音楽評論家の心底笑男さんが、最近の世の中の気になるトピックについてヨタヨタとくっちゃべる本企画。ツルッと連載開始です。

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出鱈目の語源は江戸時代の博打用語でサイコロの出た目のままみたいな意味なんですって。

吉: 心底さん、ひさしぶりですね。

心: やーどもども。なんかまた新たに企画が始まるらしいけど、どんな感じなの?僕は何すればいーの?

吉: なんもしなくていいです(笑)。ただ僕とくっちゃべって頂ければそれでいいです。タイトルの与太話って意味をググってみたんですけど、「でまかせのつまらない話、でたらめの話」って書いてあって漢字だと「出鱈目」って当て字らしいけど、なんか良いじゃないですか。

心: え?なにが(笑)?

吉: 言葉の響きとか。サウンズグッドですよ。出鱈目の語源は江戸時代の博打用語でサイコロの出た目のままみたいな意味なんですって。つまりRandom。

心: ランダムって良いよね。

吉: 例えば「今晩なに食べたい?」「なんでもいいよ」という日常に頻繁に登場するランダム感がありますよね。まあこの場合は「なんでもいいよ」と答える側が獲得するランダム感。これって聞いてる側はイラっとするんですけどね。

心: そうだね。「こっちもなんでも良いからお前に聞いとんのじゃ!」という話だからね(笑)。ランダムといえば、iPodにあるランダム機能とか使う?

吉: たまに、選ぶの面倒な時に使いますね。でも、その時の気分で聴きたい曲が来るまで次へ次へと曲を変えちゃうので、あんまり意味がない。そして恥ずかしいボイスメモとかが突然ランダムに挟み込まれて赤面したり(笑)。

心: なにそれ(笑)、聴かせてよ(笑)。

吉: 文京区の小石川図書館てとこには、CDが凄くたくさんあって、一度に10枚づつ借りれるんですよ。Jazzとか片っ端から借りてた時期があって。でも全然聴けてなくて。で、iPodをランダムに再生するとそういう自分のライブラリーから埋もれてた曲で、お良いじゃん!みたいのが発見されるんですよ。

心: まあこのご時世ならではの聴き方だよね。ちなみに誰の曲が良かったの?

吉: 昨日のランダム再生で発見したのはウェス・モンゴメリーってギタリストの「Polka Dots And Moonbeams」って曲で、久々に個人的美メロ殿堂入りしたんですけど。でも、やっぱりこういう聴き方はよくないなーとは思いますけどね。

心: まあね。買って満足じゃないけど、聴いてないCDやレコード、読んでない本とか。僕もまだ家にたくさんあるもんな。

吉: つまり、そういうランダム感、なんでもありな話題をこの場では振りまいて行きたいので、心底さんはそれに乗って行って頂ければ。ということです。「感覚はランダムに」©STONE63 的な感じで。

心: ふーん。なんかよく分からないけどさ(笑)。要は吉田くんが喋りたいだけでしょ(笑)。「なんでもいい」けど「どーでもいい話」ではないんだよね?

吉: いやどーでもいい話も、それも含めて与太話として。

心: そう、まあいいや(笑)。それはそうと最近はGoogleでなんでもかんでも調べられるし、それなりに分かった気になるような説得力を含んだ情報があるしさ。それを自分の知識として「〜らしいよ」と使うことに、僕なんかは少なからずの抵抗があるんだよね。

吉: でもそれって、少し前でいうテレビであり、新聞であったものですよね?ソース元はとてつもなく広範囲に広がった訳ですが。

心: そうだね。まあ重要なのはソース元ということになってくるんだけど。でも問題は、知らなくていい情報、知りたくもなかった情報までも入ってきてしまう事なんだよ。ここまで情報が氾濫している時代は、今までもこれからもないと思うよ。だってググっても分からないことってこのご時世にある?

吉: そりゃありますよ。逆に思うのは、多分僕たちが日々追い求めてるのはググっても出てこないような濃ゆい情報なんじゃないですかね。

心: そうだね。そこは大事にして行きたいね。ググればわかる事も、あえて貴方に聞きたいんだよ。って時あるよね。

吉: ありますね(笑)。心底さんは最近は映画見ました?

心: あれ、あのスパイク・ジョーンズの、、。少し近未来のやつ、、

吉: 「her」ですね。AI (人工知能)と恋愛する男の話ですよね。

心: そうそう。

吉: iPhoneのsiriがもう少し感情を持って人間の心を読み取るくらいになったら、という遠くない未来の話だけに、全然あり得るなーと思いましたね。

心: 僕なんかあんなのあったら、ドップリ惚れちゃうよ(笑)。スカーレット・ヨハンソンの声はやたらセクシーだよね。かすれ声で。あとあの俳優さんいいよね。ホアキン・フェニックスだっけ。弟なんだよね。

吉: そう、リバー・フェニックスの。ホアキン・フェニックスといえば最新作、見ました?ポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)監督の「インヒアレント・ヴァイス」あれは傑作でしたね。

心: もちろん見たよ。封切り初日に。上映館が少なくて、渋谷か豊洲か、都内だとどちらかしかなかったよね。渋谷なんて行きたく無かったから豊洲へ行ったけど、全然人居なくて正解だったよ。でもこんな人気ないのかー。とも思ったけど。

なんだかよく分からないものにただただ圧倒されたような感覚ですね。

吉: 僕も豊洲のユナイテッドシネマで見ました。人は少なかったですね。というか都内で上映館2つというのもPTA監督にしてはどーなのかなと。まあ一般受けする内容ではないですけど。あと豊洲のユナイテッドシネマに4DXデジタルシアター( http://www.unitedcinemas.jp/4dx/ )というのがあるんですね。全然知らなかった。

心: 4DX?なにそれ。

吉: なんか座席が揺れたり、上下に動いたり、映画の中で雨が降ったら座席にも水が降ってきたり、霧の場面ではミストがファ〜っと出たりするらしいですよ。もうアトラクションみたいに。

心: それは迷惑極まりないね(笑)。

吉: あと匂いがファサ〜っと出たりもするらしいですよ(笑)。もうなにがなんだか。

心: 匂いか。いや、それは良いかも。「インヒアレント・ヴァイス」のホアキン・フェニックスは常に吸ってたもんね。あれ、匂い出してくれるなら4Dで見てても楽しいかもね(笑)。

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吉: 四六時中吸ってましたね(笑)。ただ、やっぱりPTA監督の作品は時間が長いんで、トイレの近い僕としてはキツかったですね。朝から何も飲まず、三回くらい上映前にトイレ行って。万全を期して。

心: へー。僕なんかビール飲みながらでも大丈夫だけどね。

吉: それは羨ましいです(笑)。で、やっぱり「インヒアレント・ヴァイス」は面白かったんです。原作はアメリカ文学の最高峰とされるトマス・ピンチョンの小説ですね。僕は小説をほとんど読まないので、全然知らなかったんですが、初めてピンチョンが映画化の許可をしたみたいですね。

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心: まあ、原作はもっと長いからね。あれは三時間に収めるの大変だよね。

吉: ストーリーを簡単に言うと、70年代のLAで、ヒッピー探偵が元カノからある人を助けるよう依頼されるんですが、どんどん怪しい組織の陰謀に巻き込まれていく。といった感じで。登場人物がやたら多いし、展開も早くて途中からストーリーは追えなくなりましたね。でも70年代の音楽と色彩感覚と俳優陣の濃さが凄くて、個人的にはオチが人間味に溢れてて、とても良かった。

心: 音楽は良かった。ストーリーも確かに人間臭ったね。体温の有る映画だよ。
ロマン・ポランスキーの「チャイナタウン」とかコーエン兄弟の「ビック・リボウスキ」みたいなテイストも感じられたね。どちらもLAが舞台だし。

吉: そうですね。どちらも意識してますよね。でも「インヒアレント・ヴァイス」は、観終わってエンドロールが終わっても立ち上がれないくらい衝撃的に良かったんです。

心: え〜(笑)。そんなに(笑)。

吉: PTA監督は前作の「ザ・マスター」とか「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」みたいな重厚な感じはあまり好きじゃなかったので、ライトな感じに戻ったのかな、凄く良かった。「パンチドランク・ラブ」と同じくらい好きですね。

心: 「パンチドランク・ラブ」好きなんだ(笑)。

吉: 何回か観てるうちに。姉が多くて、色々自分に似てる気がして、親近感が湧いてくるんですよ(笑)。とにかく「インヒアレント・ヴァイス」は、なんだかよく分からないものにただただ圧倒されたような感覚ですね。

心: それは芸術の本質みたいだね。

吉: Medeski, Martin & Woodのライブを昔O-Eastで観た後の、完全インプロに圧倒された感じを思い出しました。あの時も終演後フロアから動けないくらいの衝撃を受けたんです。で、トイレ行ったらその日DJやってた、DJ Quiet Stormさんがいて「MMW凄かったですね」って話しかけたら「巻きたいねw」とか言って中目黒薬局のステッカーをくれた思い出がありますけど(笑)。

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心: そうなんだ(笑)。それは良い体験をしたね。他にはどんな映画観た?

吉: 去年から今年にかけて、好きな映画監督の作品が軒並みロードショーしてて、映画熱が久しぶりに高まりましたね。デビッド・フィンチャーの「ゴーン・ガール」とか、クリストファー・ノーランの「インターステラー」とか。どっちも面白かった。

心: みんな40〜50代の監督だよね。それぞれ脂が乗ってきたから次回作も楽しみだね。僕はクリント・イーストウッドの「ジャジー・ボーイズ」が好きだったな。あと「アメリカン・スナイパー」も良かったよ。

吉: あーそれまだ未見です。こないだ「ミスティック・リバー」をやっと観ました。なんだかとても深淵な気持ちになりましたね(笑)。最近観たいのは、テリー・ギリアムの「ゼロの未来」と「セッション」とマイケル・マンの新しいやつです。

心: どんどん観に行きな!僕なんて映画みてもすぐ、どんなか忘れちゃうからね。まあいつでも初見の気持ちで見れるのが良いところだけど(笑)。

吉: 僕もどんどん忘れちゃう方なんで最近、映画観たやつを記録するFilmarks( https://filmarks.com/user/ochanoma )ってアプリがあってそれに備忘録としてつけてるんですよ。なかなか面白いので心底さんも初めてみてはいかがでしょう。

心: へーやってみようかな(笑)。クリストファー・ノーランの「インターステラー」は濃厚なSFで良かったな。あれは時空を超えてなんたらかんたらって話だったよね。あんま覚えてないけど(笑)。

吉: そうですね。あれはワームホールに突入して過去も未来もない8次元の世界からこんにちは。みたいな話で、ストーリー的には父親と娘のやりとりが輪廻みたいにグルグル回ってる。

心: でもその感覚って外国だと分かりづらいみたいだけど、日本人だと、ドラえもんのタイムマシンの話でかなり耐性は付いてるよね。不思議な出来事がまず起きて、それは実は未来の自分が仕組んでた。みたいな。なんかすんなり受け入れられた。

吉: バックトゥザフューチャーとかは未来が変わっちゃうから少し違うか。もっと遡ると、手塚治虫の火の鳥に行き着くんですよね。輪廻とか猿田彦とか。

使い方によっては最高の褒め言葉にもなるぞ!ということを延々と書いてる本で(笑)

心: クリストファー・ノーランといえば、やっぱり「ダークナイト」だと思うね。こないだジョーカーの絵をInstagramにあげてたよね。あれは誰の絵なの?

ゴッサム・シティのドンが鎮座しておりました。#正しいFUCKとBITCHの使い方展

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吉: あれはNAIJEL GRAPHさん( http://www.naijelgraph.com/ )という方が描いた絵なんです。「正しいFuckの使い方」という本を出してて、つい先日「正しいFuckとBitchの使い方展」という個展をやってて、そこで一目惚れして購入した逸品です。

心: なになに、正しいFuck(笑)??凄い本だね(笑)。

吉: FuckとかBitchとかShitとか、英語のスラングで放送禁止用語で、けなしたり、罵ったりとかマイナスなイメージがあるけど、使い方によっては最高の褒め言葉にもなるぞ!ということを延々と書いてる本で(笑)。まあ日本語でもあるじゃないですか、クソ可愛いとか、ゲロ美味いとか。とにかくFuckin’ Greatな展覧会でしたね。

心: 他にはどんな絵があったの?

吉: NAIJEL GRAPHさんはヒップホップとか、ブラックミュージックに造詣が深いので、ビズ・マーキーとかODB(オール・ダーティー・バスタード)とか、RUN DMCとかマイケル・ジャクソンとか。どれもこれも本当いいんですよ。でも欲しいやつはみんな売り切れてたんですよ。

心: へー見てみたいな。映画のネタもあった?

吉: 沢山ありましたね。スターウォーズとかジョーズとか。あと、ラリー・クラークの肖像があってジョーカーと凄く迷ったんですが。

心: このジョーカーの絵は下にはなんて書いてあるの?

吉: これは日本語に訳すと、「このポンコツは何年も動いてない」みたいな感じだったと思います。今僕の部屋に飾ってます。凄い存在感ですよ(笑)。

心: そもそもNAIJEL GRAPHって人はどうやって知ったの?

吉: もともと僕の姉の友人だったんですよ。で、姉の結婚式のウェルカムボードを描いてて、それが凄く素敵で。是非Senkawosのも書いて欲しいな。と頼んでみたんです。

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心: あぁ!これか!トートバッグになってるやつ。

吉: そうです!アー写にも使わせて貰ってます(笑)。NAIJEL GRAPHさん、また6/13から7/5まで「Sampling Tours」っていう展覧会やってるみたいなんで次は一緒に行きませんか。

心: いいね。行こう行こう!

吉: 行きましょ!ではあっという間でしたが、今回はこれにてお開きとさせて頂きますね。

心: え!もう終わり?

吉: 3本録りなんで、心底さんにはそのまま残っていただきますけど(笑)。

心: うへ〜っ(笑)。

〜つづく。

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