心底笑男とSenkawosの不思議な鼎談[第三回] 心底笑男×吉田玲央×平山敬之

2012-05-08  心底 笑男

【心底笑男とSenkawosの不思議な鼎談】とは、わたくし心底笑男がSenkawosから選ばれた二人一組を御招きして、夜な夜な鼎談するインタビュー形式のパーソナルドキュメンタリーです。

さて、本シリーズもついに最終回となりました。今回のゲストはキーボード兼ヴォーカルの吉田さんと、ヴォーカル兼パーカッション兼猫舌担当の平山さん。Senkawosの「ふざけ」担当コンビを迎えて、ワイワイとやっていきます!

吉田さんはキーボーディストの傍らブラックミュージックからモダンアンビエントサウンドまで「お茶の間を涅槃たらしめる」ゆるゆるDJとしても活躍中です。物事をアンダーグラウンドな切り口で捉え続け育まれた「妙」なセンスで、Senkawosのサウンドに「癖になるスルメ的珍味感」を与え続けています。平山さんは吉田さんと共にSenkawos以前からラップを嗜み、ハードコア・パンク・フォークなスタイルを追求する流浪の詩人にして希代の猫舌キャラを推し進める変人でもあります。

バンド結成以前からラップグループなどで一緒だった二人にしか分からない阿吽の呼吸をお届け出来ればと思っていたのですが、もう既に二人とも酔っ払って出来上がってしまっていますね…。インタビュー会場に居酒屋をチョイスした私の責任でもありますが、とにかく始めてみましょう!勿論新作「Across The Universe」についてもたっぷり聞いてみましたYO!!!

第三回 心底笑男×吉田玲央×平山敬之

心底笑男(以下 心): ヨロシクお願いします!

吉田玲央(以下 吉)平山敬之(以下 平): うい~す!!!

: ではまず、Senkawos以前の活動遍歴を教えてください。

: うーん、ラップしたり酒飲んだり、酒に飲まれたりラップしたりかな~。ヒック。。

: まあ、今この瞬間も相変わらずですね(笑)。ひらやん(編集注:平山の愛称)とは中学から一緒なんですが、昼休みに同級生のみんながサッカーをしている中、僕らは階段に座って、やれブッダブランドだカミナリだスチャダラパーだなんて具合にくっちゃべってて、HIP HOPにのめり込んでいましたね。なので自然とラップを始めて、「Never Ever Fever」(編集注:吉田・平山・大島が在籍したSenkawosの前身バンド)や「クミカリ」というラップユニットをやっていました。

: それは初耳です!確かに新作にも一曲、ドロドロのラップが収録されてますね。まあその話は後ほどタップリと。その頃の仲間は今も仲良しなんですか?

: そうですね。マル君(STONE63)とかりょうちん(RUSOW)とか今も一緒に遊んでますよ!あとピンクマンもその頃からDJやグラフィティをやっていたし、ヨシケン(kewn)も居ましたね。19歳くらいかなー。青山の蜂とか。今はないけど下北沢のWedgeとか。

: 懐かしいね。あと、Don’t Forget カジゲン!

: そうそう、「梶」という僕の高校の同級生が初期のSenkawosで歌を唄っていたんです。その頃の録音はArchivesに克明に記録されてます(笑)。今も演奏してる曲のネタの大半は、この時期に生まれたんですよ。。

: ま~そういう意味じゃ、あの時期も無駄ではなかったよね!ハハッ!

『MAIWAI '09』での貴重な一枚。3人編成時代の実験的なセットが確認できる。

: 人に歴史ありですね!ではそもそもSenkawos結成の経緯とは?

: ん~と。。昔、20歳くらいかな。。酒屋さんでバイトをしてた時に~バンドマンがいっぱいいたんすよ。。んで~「みんなでライヴすんべー!」、「すんべすんべー!」ってなって。ヒック。。そん時に休止中だったラップグループのメンバーであり、唯一の友達?でもある吉田に連絡した所「オレ、バンドがやりたいねん」なんていう中学生の発想か!っていう発案の元、これまた古い友人?であるタケ(編集注:ギターの大島武宜の愛称)に連絡をして「よしっ!んじゃあバンドやんべー」、「やんべやんべー!」ってなったんす。確か!

: そうですね。まあ簡単にまとめると、ラップもそろそろ飽きてきた頃にひらやんが知り合いにLIVEやらない?と誘われたので、大島くんにも声を掛けて三人でバンドスタイルで始めたのが最初です。

: なるほど、吉田さんにまとめていただけるとすごくわかりやすい(笑)。そんな平山さんの通訳としても活躍中の吉田さんですが、Senkawosでの自分の役割とは?

: キーボードと歌、ラップ、あとはサウンドの汚し役といいますか、整いすぎた音を崩していくのが好きなので。

: 汚し役!では平山さんは?

: う~ん、なんだろう。。「オモシロ消しゴム」っすかね~!

: え~と…、吉田さん?通訳お願いできますか?

: (オーダー中の為、聞きそびれている吉田) すいませ〜ん!マグロブツと鶏の唐揚げ。ん~と…、枝豆も!

: あれれ、まあイイか…。ではお互いの第一印象と、今現在はどう見ているかを教えてください。

: ひらやんとは実は小学校から一緒で、まあ仲良くなったのは中学からなんですが、忘れもしませんよ。この人は小学校1年の最初の授業から思いっ切り寝てたんですよ(笑)。第一印象は「ブッ飛んでるな」と思いましたし、その思いは今も変わらずですね。

: え?俺?寝てないよ!ぜったい!ヒック。。まあいいや。吉田の第一印象は、最初も最初のホントに初対面の時はデカくて変な奴だな~と。今はなんだかんだでいい奴だな~ってそんな感じっすかね!まぁ一番付き合いが長いと言うか、ヒック。。でも照れ臭いっスけど吉田が居なかったら相当なダメな奴になってたかもしんないッスね。今でも充分ダメですけど(笑)。

: おや!ちょっと感動的なストーリーになりそうな感じですね。でもまあ長くなりそうなのでサクサク行かせて頂きますね。音楽、楽器を始めたのはいつ頃でしょうか?

: 小学校の時にピアノ教室に通っていたんですが、発表会が女の子ばかりで。「こんなの恥ずかしすぎる!俺野球やりたい!」と辞めてしまったんです。今から思えば全然指が動かないので、もう少しやっていればなと思います。で、中学くらいで音楽に目覚めてそこからまたデタラメですが鍵盤に触れていきました。

: 中学生の時にロスアンゼルスのラッパーでCOOLIOっていう人がいて、たまたま同じ時期ぐらいに吉田も聴いてて、ヒック。。んでま~ラップでもやってみっかみたいなノリで始めましたね。パーカッションのポジションはSenkawosにカズキとワディ(編集注:ドラムの和田佳憲の愛称)が入ってきてからのコンバートです。。って野球かっ!!!

一同: (沈黙)

: …あ、心底さん、ここ笑うとこなんですよ(笑)。

: わ~(笑)。ごめんなさい、まだお酒が足りてないのかもしれません!では吉田さんはなぜ鍵盤楽器を選んだのですか?

: ん~やっぱり、どんな曲でも一人で表現できるし、弾くたびに新しい発見があって面白いからですね。あとエレピの音ってなんて素晴らしいんだろうと毎日思ってます。

: 自分のパート以外でやってみたい楽器は?

: ドラムですね。僕はソロでも活動してまして、打ち込みもやるんですが、やっぱりリズムは大事だと思うんですよ。腰にくるグルーヴというか。生ドラムはスタジオでワディがいない隙に叩くくらいしか機会がないんですが、これからは一人でスタジオに入ったりして、やっていきたいです。

: んーっと、色々とあるけど、最近はトランペットを夕日に向かって吹きたいのでトランペット!

: わーお!素敵ですね!では自分の前世はなんだったと思いますか?

: クラゲか山芋ですね。ぬぼ~っとしてる生き物だと思います。

: 業が深かったんじゃなかろうかと思ってます。。

: 好きな食べ物は?

: ビールに合うモノが好きです。強いて言うならオーザックかな。

: ジャージャー麺とか?ん~焼き肉?なんか色々あって選べね~。ヒック。。

: では無人島にひとつだけ持っていけるとしたら何ですか?

: んー。最近買った、自分の眼鏡に取り付け可能なUVサングラスですね。チャキンと上に向けることが出来ます。100円でした。

今夏の標準装備となるであろう、「自前眼鏡に取付可能なUVカットサングラス」。180度可倒式で暗い所でも安心。これで無人島の強い日差し対策はバッチリだ。

: 平山さんは何を持っていきますか?

: ドラえもんっス。。ちなみに小学生のころ文集に「将来なりたいモノは?」っていう欄があってドラえもんになりたいって書いてました(笑)。よくよく考えるとドラえもんって結構大変なポジションだなって最近思いますけど。

: いや、Senkawosのメンバーを「ドラえもん」の登場人物に置き換えるなら、ひらやんは完全にのび太でしょ。で、そんなのび太のサポート役が僕、ドラえもんですね。となると、大島さんがジャイアンで、ワディがスネ夫、石井くんがしずかちゃん、でエリヲがドラミちゃん!これでどうですかね?

: え、えぇ…。ピッタリだと思います(笑)。

(この後、「キテレツ大百科だったら」、「スラムダンクだったら」、「ガキの使いメンバーだったら」と話は膨みますが、割愛。)

: では好きなミュージシャン、共演してみたい(故人含め)ミュージシャンはいますか?

: ピアニストで好きなのはセロニアス・モンクとビル・エバンスです。僕の中では二大巨頭ですね。共演してみたい人はドン・チェリーです。

: 好きなバンドはNOFXです!共演してみたいアーティストはオゾマトリ!ヒック。。

: 普段はどういう音楽を聞きますか?

: 最近はジャズのスタンダードを片っ端から聞いては覚えて耳コピしてます。スタンダードには普遍のメロディーが存在してますよね。歌心をどう楽器で表現できるかが僕の今の課題です。

: なんだろうな~。あんまり俗に言うルーツミュージックって言うのが苦手で例えば、メタルでも昔ながらのコテコテのメタルとかよりもハードコア要素を取り入れたメタルコア?なんかそう言うハイブリッドなほうが好きで聴いてます。

: では今作、「Across The Universe」の聴きどころをお願いします!

: そうッスねー。ワディとカズキとエリヲちゃんが前よりもしっかりと合わさってオレが少し遠ざかる感じが「とってもいい感じ~」。あ、これはローラ風ですね。

一同: (苦笑)

: とにかく幅広くやってみてるんで何度もリピートで聴き込んで欲しいです。噛めば噛むほど味わい深いと思います!あ、今思い出したけど、昔Senkawosのライヴを見てくれた人が「オモチャ箱をひっくり返した様なサウンドだね」と言っていたんですが、今作はまさにソレ!という感じですね。

: なるほど!とてもキャッチーなフレーズですね!ではレコーディングで苦労したことは?

: 自分的には指が動かなくて練習不足を痛感したことですね。フレーズが固まらない性分なので、気に入ったテイクが録れるまでリテイクを繰り返して。レコーディングエンジニアの大島さんにはだいぶ御世話になりました。

: 俺は、無い!(キッパリ)

: それは素晴らしいですね!ではレコーディングで思い出深い曲はありますか?

: ん~と、「東京砂漠」ですかね~。とにかく今回はレベルアップを目指して、0・02ミクロン位は成長したかも(苦笑)。ヒック。。ムニャムニャ。。

: 「Measuring a Wavelength」かな。僕が個人的に作った「浅瀬ぱしゃぱしゃJAM」という曲が元になっているのですが、ミニマルなカリンバフレーズがお気に入りです。

: 今作は今までにも増してバラエティー豊かなジャンルの横断、幅広い音楽性が顕著にあらわれていました。その中でも、ゲテモノチューンと言わざるを得ないドロドロなトラックの上でお二人がRAPに興じるキワモノの最北ともいえる「酔っぱらいに明日はない」は色々な意味で印象的でした。この曲はお二人で作られたんですか?

: はい、そうです。まあテーマは自分の中では一貫してあるんですよ。それこそ前作の「Rediscovery of the World」の歌詞にある「社会の底辺×若さ÷ビール」だとか、「In Dreams」の歌詞にある「酩酊状態で頼むA定食」とか。まあそこら辺の集大成的な曲とも言えますね。

: 二人ともお酒が大好きなようですね。一聴すると救い様のない物語ですが、私には一筋の光も見えました。

: そうですね。まあブルースですよね。居酒屋という特殊な空間での浮き沈みを幾度となく経験して「なお今宵も酔っぱらう」という輪廻感と、退廃感が入り混じってます。でも最近思うんですよ、日本人で良かったなと。居酒屋があって良かったなと。ヒック。。だから僕が思うに、日本人は改めておろしポン酢に感謝しなきゃ駄目だということですよね。

: え、えぇ…。平山さんはいかがですか?

: ん~。ニャムニャム。Zzz…。

: ひらやん、インタビュー中ですよ~(笑)。。

テーブルを枕に「寝落ち」する平山。その眠りの深さは「起きざること、平山の如し」というSenkawos諺を生み出すほど。「気付いたら一人残されてて、未会計の伝票を持った店員に起こされた時は流石のオイラもビックリしたゾ!」とは本人談。

: ん~…。。Zzz…。。

: あちゃ~(笑)。寝ちゃったみたいですね。まさに「酔っぱらいに明日はない」を地で行ってますね(笑)。

: いつもこうなんですよ。ホント申し訳無いっす(笑)。ここが彼の涅槃で間違いないです(笑)。

: いえいえ!素敵だと思います!では吉田さん、今年の夏はいかがですか?

: んー。夏はあまり好きではないんですよね。まあでも当面の目標はこのポッコリお腹を凹ますことかな。あとは「野外で観たい」と良く声を掛けられるので、どこかのキャンプ場やビーチなどでライヴしたいですね。是非誘ってください!

: 噂によると、去年に引き続きまた動物園でのライヴがあるみたいじゃないですか?

: そうそう、ヒック。。まだ発表出来ませんが、動物園以外にも「意外な場所」でのライヴを企画中ですのでお楽しみに。

: それは楽しみですね!では最後に今後のSenkawosに必要なものは何だと思いますか?

: そうですね~。例えば、この間行ったトンカツ屋さんで「トンカツおろしポン酢定食」を頼んだらトンカツの上にすでに大根おろしがデロ~んと乗っかっていたんですよ。それって折角の揚げたてサクサクのトンカツを食べるチャンスを台無しにしてますよね。ヒック。。そうなると「【サクサクの】トンカツおろしポン酢定食」をいただきたい僕は、まずノーマルの「トンカツ定食」を頼んでおいて後から「大根おろしトッピング」を追加するという回りくどい注文の仕方を余儀なくされるんですよ。でもそういう目に見えない努力が素晴らしい美味しさ、バンドでいうならアンサンブルを生むと思うんです。だから練習も遊びも日々精進ですよね。ヒック。。

: え、えぇ…。分かるような、分からないような…。

: あと、やっぱり癖になる「味わい」みたいなモノも追求して行きたいです。これは僕の場合ですけど、例えばお祭りなんかでイカ焼き屋の横を通った時の「焦げた醤油」の匂いに何故かワクワクするんですよ。ヒック。。まあ人それぞれだと思いますけど、ウキウキ感?ワクワク感というか。なんか判らないけど魅力的な何かを音や歌や遊びで表現したいんですよね。ん〜何が言いたいんだろ。ヒック。。

: ん~?何か言った?ムニャムニャ。。Zzz…。

: ひらやん、最後にズバッと一言お願いしますよ。

: ん~、ムニャムニャ…。まあそういう事だね〜。とりあえず、ウーロンハイくださ~い!

: あ、私も!

: 僕も!

: いや~だいぶ飲みましたね~。夜も更けて来ましたし、そろそろお開きにしましょうか。ではお約束のアレいきますか!Senkawosのニューアルバム「Across The Universe」!はい、せーの!

一同: 6月6日発売~!ヒック。。

: お疲れ様でした!

最後は音楽論から何故かトンカツ論まで飛び出し、半分飲み会の体でお送りした今回の鼎談。いかがでしたでしょうか。また機会があれば彼等へのインタビューを続けて行きたいと思っております。それでは全三回に渡ってお届けした【心底笑男とSenkawosの不思議な鼎談】シリーズはこれにて一旦終了となります。最後までお読みいただき感謝でございます!また会う日まで!

音楽評論家 心底笑男

取材・インタビュー・文:心底笑男

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